始発の駅で電車を待つ寸暇を惜しんで、ベンチでブログを打ち始めた(我ながら感心感心)。
その時、持っていたのは愛用の鞄と、出先での頂き物。私は、自慢ではないが、普段から忘れ物、紛失物がやたらに多い(確かに自慢出来ることじゃない)。
そのことは、自分でも薄々気が付いていて(薄々かよ!って、家内あたりから突っ込まれそうだが)、実はこの日も警戒していた。
過去の夥しい事例から帰納すると、この時のように、我が家を出る際に持っていなかった物を、途中で忘れる場合が最も多い。
その度に、これまで殆ど人生を生きて行くのが嫌になるくらい、家内から徹底的に絞り上げられて来た。
そこで、さすがの私も多少、用心するようになっている。
だから、頂き物については、ブログを打ち込みながらも、注意は怠らなかった(これも感心)。
待っていた電車が来たので、それに乗り、暫く作業を続けた。
何駅か過ぎて、打ち終わったので、珍しく持ち物をチェックした(これもー)。
例の頂き物はちゃんとあった。やれやれ、これで家内から大目玉を喰らわずに済む。
と安堵したのも束の間、何と鞄の方が無くなっているではないか!その瞬間、私の頭の中で、家内の鬼の形相が超ドアップで現れたのは言うまでもない(って、言わなきゃ分からないか)。
確かに、長年使いなれた愛用の鞄を無くすのは残念だ。
しかも、その鞄には年末までのスケジュールを書き込み、様々な連絡先も詰まった手帳が入っている(ちなみに私は完全無欠のアナログ人間)。
さらに、なかなか再入手が難しい貴重な本も、何冊か入れていた。
それらが一挙に失なわれるのは正直、かなりの痛手だ。
だが、それより何より家内に叱られる方が、遥かに苦痛。
で、大慌てで記憶をたどる。
でも、どこで無くしたか、全く思い出せない(初めから気付いていないんだから当然か)。
とにかく直ちに下車して、駅員に訴えた。
駅員は機敏かつ誠実に対応してくれる。
しかし一番、可能性が高かった始発駅にはナシ。
妄想の中の家内の顔がさらに巨大化する。
すっかりショゲ返っていると、「それらしい鞄が〇〇駅に届いています」とのこと。
藁にもすがる思いで、その駅に急行。
駅員がカウンターで別の客の応対をしているのを、ジリジリしながら待つ。
と、カウンターから少し離れた位置にもう1人、客が。
でも、並んでいる風でもないし。
先客なのか微妙な感じ。
なので、申し訳ないが、さきに駅員に要件を伝えさせて貰った。
予め鞄の特徴や中身についても喋る。
結果、紛れもなく私の鞄だった。
おー、何とありがたい!駅員に繰り返しお礼を述べた。
先ほどの客は、そんな私の様子を心なしか、微笑ましく見ている気配。
不思議に思って、すぐその場を離れず、その客の様子を見ていると、彼は駅の構内か車内で、誰かの忘れ物を見つけ、駅員に届けに来ていたのだ。
瞬間、私の鞄を届けてくれた、誰とも知らぬ人物に重なり、私は思わず、その客に合掌したい気持ちになった。
帰宅後、そんな顛末を家内には一言も喋らなかったのは、言うまでもない。
ブログも、これからは場所を選んでやろう。